大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和28年(う)3743号 判決

被告人 横山寿 外一名

〔抄 録〕

次に原判決の引用する石川源一郎の検察官に対する昭和二五年八月二八日附及び同年八月二九日附供述調書によれば、石川源一郎は被告人横山に対し、もとより小切手金を支払う意思の下に右の額面五〇〇万円の小切手を振出したものであり、只当時同人は小切手支払人である埼玉銀行豊岡南支店には五〇〇万円の現金を支払うことのできる預金がなかつたので、小切手振出の際同年五月三〇日に現金と引替えるから銀行に取立てないでもらいたい旨を申出、被告人横山の承諾を得ていたものであるが、同月二九日石川源一郎は通商産業省臨時通商業務局において局長名義の錫払下証明書発行の有無、及び被告人吉賀の同省内における地位を調査したところ、そのような証明書は発行されたことなく、吉賀と称する職員は同省内にいないことが判明し、被告人横山の言の全く虚構なことを知るに至つたので、同月三〇日被告人横山から現金支払の要求を受けたがこれに応ぜず、その後同年六月上旬中同被告人から右小切手を石川源一郎に返還したことを認めることができる。そして富永大乗丸作成の昭和二五年八月二四日附答申書によれば、被告人横山は石川源一郎との前記約定に反し同年五月二九日富永大乗丸をして右額面五〇〇万円の小切手を支払場所に呈示させたが、預金不足の理由で支払を拒絶されたことを認めることができるけれども、小切手所持人は支払拒絶の場合には振出人に対し償還請求権を有するものであり、当審証人小坂井早司の当公廷における供述によれば、当時石川源一郎は相当の個人資産を有していたことを認めることができるのであるから、同人振出の右小切手は詐欺の客体である財物に該当することは明らかであり、所論の原審証人齋藤悌次郎、同折井恒明の原審公判廷における供述によつても石川源一郎振出の右小切手が所論のように何等の価値もない小切手であるとは認められない。

(近藤 吉田作 山岸)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!